サロン・ド・ヴェール 絵画教室
第1回 「りんごを描く」
ロダンの言葉から
初めは「ロダンの言葉」から入りました。
ああ、誠実でなければならない。生涯のいかな時でも、
いくら自分を強いと信じたとて、自分の彫刻のうちに
甘く出来切らないある部分があるのは知っているが、
公衆がそれに気付くものか、また今度よくやる事にし
よう、と考えるようではなりません。公衆がそれを認
めなくても、自分自身が認める。困難をごまかす習慣
がついて来て、投げやりな彫刻で満足するようになり、
やがて、まるで悪い彫刻になって来ます。自分の良心
と妥協してはいけません。何でもないというほどの事
でもです。後にはこの何でもない事が全体になってき
ます。……芸術はのろさを要求する。人々の、殊に青年の頃には思いも及ばないほど
の辛抱を要求します。会得する事もむずかしいしまた作ることもむずかしい。
(岩波文庫「ロダンの言葉」より)
りんごを描く
自己紹介も終わり、早速、みんなで実際のりんごを描き始めました。りんごは私が前日近 所の
スーパーで買いました(実際の画像はなし)。
オーナーからのリクエストにお応えして、私も油絵を一枚。この画像は「今月の絵」に大きく
アップしました。
模写をしてみる
下のどちらかの絵を模写してもらいました。もちろん私もやりました。
上が中村彝(1887〜1925/油彩、F4)、
下がクールベ(1819〜1877/油彩 キャンバス 1871年 ほぼP12)。
彝のほうが人気がありました。
模写は完全にやらなくても、けっこうです。1個でも一部分でも。そのかわりよく見てそっく
りに描いてください。
もう一度描く
模写が終わったら、もう一度描いてみます。古典絵画の中の情報をたっぷり吸収して描けば一
段とうまくなる理屈です。
ところが、あら不思議。最初に描いたほうがいいのです。絵は理屈ではない。元気さや緊張感
が一番大切。絵画教室の最初の一枚は誰でもみんなうまく行くのです。嘘だと思ったら、どし
どしご参加ください。
最後にまたロダン
以下の言葉はロダンが若い頃先輩に教えてもらった言葉です。
彫刻をする時決して形を間口(拡がり)で見ないで、いつも奥行(厚み)でお見。……一つの
表面を見る時、それを必ず一つの容積(量)の端だと思いなさい。お前の方へ向いた大なり小
なりの尖端だと思いなさい。そうすればお前は『肉づけの法』を持つことになる。
そして、ロダンはこの方法を人体彫刻に応用しました。さらに古代彫刻家も同じ事を知ってい
たと悟るのです。
これは、りんごを描くとき「風船にならないように、芯を描け」という教えに通じます。
次回のテーマは「手」
手は永遠の絵画テーマです。巨匠の言葉はドガから。参考模写作品はレンブラントの「ダ
ナエ」の手や奈良の仏像を予定しています。
他のテキスト
第2回絵画教室「手を描く」(03年8月13日)/第3回絵画教室「顔を描く」(03年9月3日)
第4回絵画教室「花を描く」(03年9月17日)/第5回絵画教室「油絵で描く」(03年10月1日)
第6回絵画教室「バラを描く」(03年10月15日)/第7回絵画教室「風景を描く」(03年11月5日)
第8回絵画教室「静物を描く」(03年11月19日)