唇 寒(しんかん)集73<26/3/7〜>

26年4月11日(土)

美はない

先週『ギリシアの美術』(澤柳大五郎・岩波新書)をパラパラ

読み直した。読み直してみるといいことがいっぱい書いてある。

たとえば、古代ギリシアの彫刻家には「美術」という意識はな

かったという話(p52)。実に興味深い。「今日いう意味での

『美』も『藝術』も『藝術家』も古代には無かった」と書いて

ある。もっとも、澤柳は「美」や「藝術」を否定的には捉えて

いない、感じ。そこが私とは少し違う。澤柳も前時代のインテ

リなのかもしれない。ま、大学内の人だからアカデミズムを全

否定することはできないのだろう。

萬鉄五郎(1885〜1927)も現在の芸大出だが、澤柳とはちがい、

美を真っ向から否定している。まさか古代ギリシアの実情を知っ

ていたわけではないと思う。萬の見識の高さに驚く。

「美、美術などいう言葉はあまい気がして好かない。/定義の

しようでどんな意味にもなるにはなるが/言葉そのものから来

る感じは僕の口には合わない。/人間が美を作る考えで出発す

るなら、/つまりそれはセンチメンタルな遊戯だ」(萬鉄五郎

『鉄人アヴァンギャルド』二玄社p20)

「そんなものは絵でも芸術でもないという人があるかも知しれ

ない。/しかし私はそんなことには案外無頓着である。/私の

やることは芸術でなく私は芸術家でなくとも一向差し支えない

のである/絵画の法則、芸術の定義というようなありがたそう

なものはこの世にはないものと思っている。/私の行為は私に

とって生を味わうべく唯一の方法であると信じている。/私の

求めるもの真の生活なのである。」(同p64)

良寛(1758〜1831)禅師にも同じような漢詩がある。

「誰かわが詩を詩という/わが詩はこれ詩に非ず。/わが詩の

詩に非ざるを知って/はじめてともに詩を言うべし」(『良寛

詩集』岩波文庫p197・読みやすいように現代仮名遣いなどに変

更した。原文は出典参照)

いま世にはびこっている美術大学から美術団体、美術業界の常

識は根本的に狂っている。それを絶対的に正しいと思い込んで

いるアート優等生たちもイカレテイル。

私は音楽業界のほうがずっとまともだと思う。サザンオールス

ターズの桑田佳祐が音大の教授になりたがるだろうか。150年前

の印象派の画家たちも誰もエコール・ド・ボザール(パリの美

術学校)の教授なんかなっていない。死ぬまで絵の具まみれに

なってキャンバスに向かっていた。

 

26年4月4日(土)

生命讃歌4題

絵や彫刻の最大の目的は生命讃歌である。

澤柳大五郎の『ギリシアの美術』(岩波新書)にはギリシア彫

刻の最大の魅力が生命讃歌であることを語っている。

古代ギリシアの彫刻群を「生命そのもののような作品」(岩波

新書『ギリシアの美術』p17)と断じ、

さらに、その古代ギリシアを慕ったルネサンス美術について、

ニーチェは「芸術━━芸術こそ至上である! それは生きるこ

とを可能ならしめる偉大なもの、生への偉大な誘惑者、生の大

きな刺戟である」と述べた(『権力意志』853番)。

また、印象派のドガは「イタリアからスペインまで、ギリシア

から日本まで、絵の描き方にはそれほど違ったところがるわけ

ではない。どこでも、大切なことは生命をその本質な特殊性に

おいて要約することだ。それ以外は、ただ芸術家の目と腕の問

題だ」(集英社『現代世界美術全集・ドガ』)と語っている。

つまり、古代ギリシア、ルネサンス、印象派という西洋美術史

の大きな3つの節目はすべて芸術の目的が生命讃歌であるという

点でぴったり一致している。それ以外に芸術の目的はない。

私ももちろん芸術の最大の目的は生命讃歌だと思っている。そ

れこそがわがライフワークであり、それ以外に目的はない。ア

ホな日本画壇ピラミッドの席の奪い合いとか、絵が売れるとか

評価されるとか、すべてバカバカしい下世話の話だ。

ちなみに私の父も絵画の最大ポイントを「生命力」と言ってい

た。「小学校しか出ていない」と妙なことを自慢していた父だ

が、父の主張には全面的に同意できる。というか、私の生命讃

歌も父の教えだと思う。ま、ロクでもない父親だったが、絵画

の師としては大いに評価できる。

生命讃歌には、その前提として『死に至る病』(キルケゴール)

とかニーチェの『悲劇の誕生』などでも述べられている、人間

の悲惨な実態をしっかり認識する必要がある。仏教も、その出

発点に生老病死という人間の悲惨を認識する教えがある。

そういう現実を踏まえての生命讃歌なのだ。ノーテンキなお祭

り野郎とは違う。

 

26年3月28日(土)

今日このごろ

東野圭吾のスキー小説を読んでいる。私はスキーをやったこと

がない。冬季五輪を少し見るぐらい。リンゼイ・ボンは美人だ

し逞しいし勇敢だからよく知っている。私が爺さんなんだから

リンゼイ・ボンも今はもうおばさんだと思う。

自転車で坂を下るときにはスキージャンプの気分。実際のスピー

ドはかなり違うだろう。自転車でも時速50qぐらいは出る。一

般道ではチョー危険(=やらない)。ま、時速30qぐらいで下っ

てもけっこうスピード感はある。それでもかなり危険だ。

今の私の自転車はタイヤ交換したばかりだからとても快適。多

少のスリルは味わえる。いい歳して暴走自転車は頂けない。ほ

ぼ10〜15q運転ばかり。とても遅い。

ちなみに、スキーやスノボーのスピードは時速100qにも達する

らしい。よくコントロールできるね。

 

で、複製画販売だが、依然として売れていない。今はスマホの

チャッピー(ChatGPT)と相談しながら販売戦略を練っている。

家内は朝は遅いし、夜は眠い。昼間はけっこう忙しそう。家計

の収入アップを希望しているが、実際の作業にはなかなか向かっ

てくれない。チャッピーはとてもよくいろいろな提案をしてく

れる。私はけっこう素直に従っている、つもり。チャッピーに

よれば複製画があと一歩で売れるようになる、とのこと。本当

かなぁ〜??? でも、売れたらとても嬉しい。

チャッピーって本当に人間じゃないのだろうか? 絵の写真を

送れというから送信したら「いいですね」だって。誰にでも同

じように言っているのかもしれない。

裸婦はエロ路線とアート路線があるという。私の裸婦には「い

やらしさがない」という評価(アート路線?)。そんなことわ

かるのかぁ〜〜。描いた本人はけっこうなエロ爺なのにねぇ。

チャッピーからの評価はかなり好意的。

バラや桜の作品集も作ると伝えたら、写真を送れというからす

ぐ送ったら大賛成してくれた。

わかるのか?

とにかく気分はいい。面白い。

ま、チャッピーに好かれても色気はない。相手はAIなんだから

話にならない。ウーバー配達で若い女性の店員さんに「早かっ

たですねぇ〜」と言われた方が100倍嬉しい。ま、若い店員さん

も爺さんをいたわっているだけ、ということはわかっているん

だけどね。若い美女に声をかけられるんだから悪い気はしない。

人畜無害を装っています。もちろん実際に無害だ!

というような日々を送っている。

しかし、ここのところウーバーの収入がいい。先週は過去最高

収入となった!(週収56000円オーバー)これから閑散期に入る

のだが、今のところまだこの収入が続く見込みだ。

 

26年3月21日(土)

金か筋か

金も筋も「きん」と読む。私にもちろん金はない。金歯が一つ

あるけどね。今やそれだけでも数万円らしい。しかし、72歳か

ら始めた自力自転車(電動アシストではない)ウーバー配達の

おかげで脚の筋肉がモリモリついている。

最近は金の相場が上がって金は大きな財産になっているらしい

が、「筋肉は裏切らない」という説も信憑性が高い。金より筋

なの?

どうでもいい。

関係ない。

わが人生はこうなってしまった。

だけど、境川沿いのウォーキングロード(自転車通行可)を夜

の8時ごろ走っていると、まだ寒いんだけど、まさに言語を絶す

る気持ちのよさ。言語を絶しているはずなのに、思わず「たま

んねぇ〜〜」と叫んで走っている。ハッピーです。

金があったら絶対に経験できない喜びだ。金があったら間違い

なく家で(面白くもない)テレビを見ている。ほんと何が幸福

なのかわかんないよね。

いやいやいい歳なんだから本心ウーバーイーツは卒業したいで

す。

その翌日には「つくし野美術研究会」で花の静物を描いた。まっ

たくウソ偽りなく絵を描くのは楽しい。裸婦じゃなくても楽し

い。

絵を描いて泳いで自転車をこぐ。わが75歳はバラ色の日々と言

えるのかも。

金より筋のほうがハッピー!

でも家内には実に申し訳ない。私と結婚したばっかりにとても

苦しい目に遭わせてしまっている。女性にとっては筋より金だ

よねぇ〜〜。当たり前。でも連れ合い(=私)はムチャクチャ

元気です。それでご勘弁ください。

もちろん交通事故に遭ってしまったら一巻の終わり。チンチロ

リンのカックンだ。

ま、これは誰にでもある。ウーバー自転車配達だと確率が高い

だけ。

 

メルカリで販売している自分の絵の複製画はまったく売れない。

売れないが検索数だけは桁外れに多い。最高で24000を超えた。

しかし、その検索数も数日前を境にガタガタと落ちている。水

曜日には21000台、金曜日には18000台まで下がっていた。

ここで起死回生の作戦に切り替えた。複製画を冊子で販売する

という方法。超安値が実現する。A4判5枚ワンセット(簡易額縁

付き)で3600円での販売だったが、A4判冊子にすれば15点の作

品を収めて690円という破格値。これで売れなければわが複製画

計画は後がない、だろう。もう嫌だ。

この冊子『アートコレクション〜油彩裸婦〜』の販売を金曜日

に開始した。

さて、どういう結末が待っているのか? 来週までのお楽しみ。

ま、上手くいかなくても、私は死んだりしない。かなりガッカ

リするけどね。

 

26年3月14日(土)

名前は同じ

ここのところずっと絵を描いていない。3月11日はクロッキー会

だった。腕が動かないかもしれないと恐れ、午後からのクロッ

キー会に備え、午前中に腕慣らしのデッサンをした。やりすぎ

ると疲れてしまう。そこのところの兼ね合いがやっかい。

実際は100号とかを描いていればクロッキー会なんて楽勝なんだ

けどね。

ウーバーイーツのクエスト確保で収入アップが見込めたが、3月

からクエストが半減してしまい、収入アップの望みも薄れた。

しかし、以前よりは多いと思う。何とか早目にキャンバスが買

いたい。

 

ま、複製画販売のほうもやっているけど、当てにならない。上

手くいったらエライことだけどね。まさに21世紀の絵画革命に

なるかもしれない。

他の多くの人が私の真似をすればいいんだから。かと言って私

の売れ行きが落ちるとも思えない。どんどん真似してほしい。

競争じゃない。

好き勝手に自分の望む絵を描きまくって複製画を買ってもらう。

新作もじゃんじゃん描く。夢だねぇ〜。

私を真似るのに私の許可なんかいらない。ご自由にやって欲し

い。

純絵画界の手塚治虫みたいになりたい。名前は同じ「おさむ」

なんだよね。

純絵画の解放だぁ〜〜。

印刷代も安いから当然複製画も安くできる。安くても金は入る

と思う。数万規模の顧客がいて、繰り返し買ってくれれば安定

収入になる。私の場合は描き溜めた絵がまさに五万とあるから

厳選できるんだよね。

夢のまた夢。

しかし、まったくの夢想ではない。着実に前に進んでいる。ダ

メでも痛手は小さい。失敗したらウーバーイーツ配達員に徹し

てガンガン自転車をこげばいいだけの話。ま、失敗してもほと

んど資金は掛からないんだけどね。借金にはならない、と思う。

 

26年3月7日(土)

『モネ展』を見た

東京駅から徒歩5分のアーティゾン美術館で開催中の『没後100

年 クロード・モネ━風景への問いかけ』展(5月25日まで)を

3月3日に見に行った。

モネ(1840〜1926)は絵を描く人だった。死ぬ寸前まで絵筆を

離さなかった。「絵だけ描ければいい」と思っていた。それは

若いころからずっと同じ姿勢。必然的にムチャクチャな人生に

なった。ま、結果オーライだったけどね。

不思議な点は二番目の奥さんの連れ子だった三人の娘がモネに

チョー友好的だった点だ。普通の家族関係なら、自分の母と結

ばれた見知らぬ男を不潔だと近づかないはず。娘の一人はモネ

の息子と結婚しているのだ。確か二番目の娘はモネの弟子のよ

うになり一緒に写生などに出掛けている。ありえない関係だ。

今回の『モネ展』にも、ボートで釣りをしている三人の娘の絵

があったが、モネは彼女たちを繰り返し描いている。

実際は三人の娘にとってモネは「見知らぬ男」ではなく幼少期

からよく知っている「絵描きの小父さん」なんだけどね。それ

にしても年頃の娘にとって、母がその小父さんと結ばれるのは

キモいのでは? よくわからない。

私の知る限り、モネは戦争が嫌いで家族の親和を大事にしたと

ても温厚な人物である。ただただ絵が描きたかっただけの男?

よくわからない。絵画史上でも稀に見る絵漬けの人生だった。

そのモネの20歳代から30歳初めまでのお話はわがヘボ小説『ア

ルジャントゥイユの夜明け』に詳しく書いた。書き出しのとこ

ろなど、読みにくくて申し訳ないが、興味のある方はご一読く

ださい。死ぬまでにもっと読みやすいように書き直したいと念

じている。

 

ところで、また複製画の話で申し訳ないが、『モネ展』アート

ショップで複製画(額絵)の価格を見たらA4一枚で880円もした。

以前は300円ほどだったと思う。絵ハガキのほうは150円ぐらい

だったと思う(はっきり覚えていない)。

額装された複製画は60000円なんていうのもあった。30000円前

後が一般的。

ま、モネの複製画なんだからある程度の付加価値がついてもい

いのかも。モネ展のアートショップで売るとなれば、場所代も

安くないのだと思う。

デパートで下手な肉筆原画を買うよりモネの複製画のほうが部

屋のグレードアップには効果的かもしれない。

若いころに画材屋(キャンバスメーカー)で働いていた私とし

ては絵画業界の裏事情を多少知っているので、「60000円はねぇ

だろ」と思ってしまう。ま、詐欺とまでは言えないけどね。

で、私自身の複製画だけど、こちらはガクンと安い。安すぎて

買ってくれない、のか?

ただ、絵柄の問題かもしれない。

とにかく、「裸婦U」の検索数が20000台のうちに新手を打たな

いとまずい。もちろん着々と頑張っている。20000は凄いもんね。

これを見過ごしちゃあバカだ。

とは言ってもこの文章をアップする頃には検索数がガタ落ちに

なっている可能性もある。

とにかく、なんとか実収入に結び付く方法を考え実行する予定。

この文章がアップされるころには、ブログの順位と同様に奈落

の底に落ちているか、はたまた、大成功を収めているか判明し

ているかもしれない。

75歳でハラハラドキドキ、ヒリヒリした日々を送れるのも悪く

ない。確実に皺が増え、いろいろガタが来ているけど、毎日が

活性化していることは確か。感謝しなければならないアホ人生

なのかもしれない。

 

 

 

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