唇 寒(しんかん)集17<04/2/1〜04/4/25>

 

04年2月1日

私が一番馬鹿であることはよくわかっている。等迦会でもクロッキー会でも私はとても若

い。53歳なのに若い。こういう歳の人間はふつう絵なんて描いていないからだ。絵なん

てものは定年後に描くものである。それがもうずーっと描いている。10代の頃から休み

なく描いている。しかも、当然ながら全然食えない。いまや、私より若い画家はたくさん

いる。新聞などでけっこう取り上げられている。賞もいっぱい取っている。画家として社

会に生きている。羨ましい限りだが、どの人の絵も全然いいと思えない。ときに酷い絵も

ある。少し前はこういう理不尽にとても腹が立ったことがあるが、それは世間の勝手であ

る。どういう絵を認め、どういう絵を黙殺するか、それは世間の勝手なのだ。世間も世間

なら私も私なのだ。とにかく、この歳まで好き勝手に描いてきた。だから、ここまでは私

の勝ちと言えなくもない。はっきり言って世間なんて関係ないからだ。しかし、メシが食

えないと困る。泣きたくなる。「それじゃあ、自分で稼ぐよ!」と突っ張ってきたが、そ

ろそろ顎が上がっている。この前の風邪のときは心底まいった。もう駄目だと思い、いま

だにその気持ちを少し引きずっている。今日これからプールへ行ってフラフラになるまで

泳いで、とにかく健康だけは取り戻そうと思っている。まだ勝負はついていない。まだ戦

う気はある。それにしても、やっぱりどうしても世間に言いたい。「もっとよく目を開い

て『絵』を見ろよ!」そのうち、いい絵を描く奴が独りもいなくなるぞ。 

 

本日の更新も、まだ体と心が病んでいるため「唇寒」のみです。

1月18日の更新は「今月の絵」改め「最近の絵」です。

なんと大量14点(自分が更新を怠けただけですが)。

 

04年2月8日

私の父が死んで7年になる。父は絵描きだった。私が40歳になる前、美術年鑑の大きな

カラー図版を示して「この絵はどうかな?」と聞くと「そんなものは売り絵だよ」と鼻で

哂った。「売り絵」というのはいけないものと子供のころから思い込んでいた。この歳に

なって考えれば、売り絵が悪いのならプロの絵描きにはなれない。プロの画家が目標でな

いなら、何を目標に絵を描くのだろうか? その答えも少し前にこの項で述べたと思う。

「本物の絵描き」になることだ。つまりゴッホになることだ。ゴッホは生涯に1枚しか絵

が売れなかった。これはプロではない。いっぽう、ピカソは売れまくった。まさにプロの

絵描き。しかし、ピカソの絵は決して売り絵ではない。ピカソもゴッホもまさしく絵描き

である。本物の絵描きである。売れる売れないは問題ではないのだ。

また、「美大へ行くな」「絵を公募展に出すな」「個展もやるな」

これが父の指示だった。もちろんほぼ言われたとおりにやった。

また「現代絵画は見るな」「上野の都美術館の公募展も見る必要なし。行くなら西洋美術

館か東京国立博物館へ行け」とも言われた。もちろん、そういうものと思い込んでいた。

私が町田近辺で個展を始めたのは30歳過ぎ。公募展に出品したのも30歳近く(すべて

落選)。等迦展に拾ってもらったのは43歳頃。初めて銀座で個展をやったのが46歳。

すべて出遅れている。それからバブル崩壊の不景気とともに現在に至る。よく生きている

ものだ。

いったい父は私にどうしろと言いたかったのか? おそらく人生を全うしろ、己を全うし

ろと言いたかったに違いない。この話は家族には聞かせられない。己を全うするなんてこ

とが目標の男が家計を支えていたのでは危なくてしようがない。ま、全うするにはまず生

きなければならないのだから、とりあえずちゃんと働きます!

 

ところで、ついにわがクレサンキャンバスがネット上に登場した。

私はベルギー製のクレサンキャンバスを使い始めて30年以上になる。本当の純油性キャ

ンバスというのは要するに世界に一種類しかなく、それがすなわちクレサンキャンバスな

のだ。そのクレサンが日本製のキャンバスと変わらない価格で手に入る。さすがインター

ネット。下のページをクリックして、じっくりご検討の上、是非一度使ってみてください。

一度使ったら、その品質の素晴らしさにびっくりなさることでしょう。

テオ画材舗

 

本日の更新は「唇寒」のみです(身体も心も復活しています)。

04年2月15日

2月10日の「なんでも鑑定団」に寺内萬治郎の裸婦が登場した。10号ぐらいだった。

400万円という鑑定額。妥当なところか?

寺内萬治郎(1890〜1964)は東美(現芸大)を卒業後、日展系で活躍した裸婦の画家であ

る。テレビでは「裸婦の神様」と言われたと紹介されていた。私も若い頃から知っていた。

東京の目黒駅のステーションビルの喫茶店に寺内の本物の裸婦があった。大きな絵だった。

2点あったと思う。数回は見に行った(独身の頃は金があったものだ)。テレビのナレーショ

ンは午前中にモデルが来て裸婦を描き、午後は思索にふけると流れた。おそらく晩年のな

のだろう。結構なご身分である。それにしても、生身の男が毎日裸婦を描くことができる

のか? そこが不思議だった。

そう言えば、その絵は画面がひび割れていた。ひびがなければ600万円とのこと。寺内

ほどの画家が画材をケチるわけないが、おそらくジンクホワイトを使っているのだろう。

ジンクは気をつけないと割れる。私はチタニウムホワイトしか使わない。これから毎週画

材について書くことにした。

テオ画材舗の開店祝いだ。

しばらくはクレサンキャンバスへのわが思いの丈を語ることにする。

だいたい日本製のキャンバスは荒目のほうが高額だ。クレサンは目が細かくなればなるほ

ど高価になる。私は和洋を問わずあらゆるキャンバスを使ってきたが、クレサンの14番

(亜麻生地なのに「絹目」と豪語する)は自分がいったい何に絵を描いているかわからな く

なるほどの摩訶不思議な描き心地。キャンバスなら何でも同じなどと言わず、この世に

生まれ、絵を描くハメになった以上、生あるうちに是非一度は使ってみていただきたい。

それは確かに値段は安くはないが、お金で買えるだけありがたいと思うべきである。(実

際、クレサンキャンバスはいつ製造中止になるかわからない品番が多い。原料の問題とか

職人がいなくなるなどの理由だ。14番は本当にそろそろなくなるかも。過去に11番と

14番フラット仕上げが消えている。現在13番フラット仕上げで復活)

以上の文脈から察するとクレサンの荒目はイマイチかと思われるかもしれないが、29番

荒目双糸。これを0号に張って描く。0号の荒目。ふつう考えるとちょっと不釣合いだが、

これがたまらなくいい。ああ、日本中の絵を描く人に本物のキャンバスを味わっていただ

きたい。ま、14番とか29番でなくとも

テオ画材舗が開店特価で出している66

番でも一目見ただけでびっくりするぐらい美しい(キャンバスの裏も表も)。クレサンキ ャ

ンバスの接写写真はこちらで見ることができる。

なお、インターネット上には知ってか知らずか、クレサンと称して日本製キャンバスを売 っ

ているサイトもある。くれぐれもご注意ください。

 

04年2月22日

画材の王様は何だろう。

キャンバス! と答えたいところだが、やっぱり筆なのではないか? 「弘法も筆の誤り」

などという諺もある。「筆法」「筆触」「筆捌き」などという言葉もある。筆は手先の延

長であり、絵描きと一体化している。『大字典』なる漢和辞典で「文房」と引くと、「文

房四候」とあり「筆、硯、紙、墨を云ふ」とある。これを洋画材に置き換えると「筆、パ

レット、キャンバス、絵具」となる。やっぱり筆が先頭に来る。

絵を描いていると、筆の弾力というか、筆の走りというか、「ああ、筆は絵を描く道具だ

なぁ」とつくづく思い知る。筆に感謝すると同時に筆に物凄い愛着を覚える。筆を大切に

しなければいけないなと感じる。次に愛着を覚える筆記用具は鉛筆である。木炭でも、コ

ンテでもない。鉛筆なのだ。私は鉛筆が好きだ。鉛筆一本あればどんなものでも描けるよ

うな気になる。若い頃は油絵を描いていても「ああ、鉛筆で描きてぇ」とヘンな欲求を覚

えた(実際油絵の途中で鉛筆で描くことも多かった)。最近はそういうことはない。筆に

馴染んできたせいかもしれない。この歳でやっとである。

本日のテオ画材舗の開店祝いのクレサンキャンバス賛は12番。

クレサンキャンバスを階級に分けると、12、13、14は最高級品。66、29、15

などが高級品。9、17、70などは普及品に分類できる。

12番は最高級品のなかでも手の届く価格だ。しかも生地は厚手で織りも大変しっかりし

ている。私ももう少し絵が売れたら12番を使いたい。13番(来週取り上げるが)はさ

らに高額。こっちも時には使いたい番手だが、12番は常用したい。もちろん今愛用して

いる66番も十分凄いが、12番は嬉しくなる描き心地。筆が走り、ぴたっと止まる。

絵具が見事に密着し、驚くべき発色を生む。

このキャンバスは絶対日本にはない。66なら日本製のキャンバスに近いものはないこと

もない(実際にはないが)。しかし、12、13、14番はクレサンキャンバスでなけれ

ば味わえない。絵を描いている方で、思わぬ大金が転がり込んだら12番を使ってみてく

ださい。

クレサンキャンバスの接写写真はこちらで見ることができる(裏も表も)。

なお、インターネット上には知ってか知らずか、クレサンと称して日本製キャンバスを売 っ

ているサイトもある。くれぐれもご注意ください。

 

04年2月29日

私より下手な絵描きは多い。それなのに売れている絵描きも少なくない。

これは不条理なことだ。

不条理だが、だからといってそのせいで私が絵の精進を怠るのもこれまた不条理。

それでは拗ねている子供と変わらない。

もっともっと描かねばいけない。全然ダメだ。どんどん描かなければ絶対に腕は上がらな

い。さらにジャンジャン描いて、描きに描いて天井知らずの腕前にならなければならない。

53歳。気がつくのがちょっと遅いがまだ十分間に合う。あの六代目三遊亭円生だって60

歳を過ぎた頃から本格的に古典落語に取り組んだのだ。今のところ元気だし、まだやれる。

金はないが気力と体力だけはある。画材もいっぱいある。

 

と、ここでクレサンキャンバスを讃えるコーナー。本日は13番。

クレサンキャンバスの素晴らしいところはよく乾いている点。完璧な乾きが期待できる。

麻生地の目止めもグルー(膠)でがっちりやってある。木枠に張るとき日本製のキャンバ

スのように伸びないのでちょっと張りにくいが、何ともいえない硬い弾力が得られる。こ

ういう特色はクレサン全般に共通している。

13番は「極細目」と分類されているが、その肌理の細かさや表面の滑らかさはまさに極

細目と言うにふさわしい。しかし、上記のようにキャンバスに張ればしっかり頑丈な支持

体となる。ここが凄い。高価だがそれだけの価値がある。私みたいな貧乏人にはなかなか

手が届かないが、使えば驚くべき描き心地を体験できる。「これぞクレサン!」と驚嘆す

る(私は最大F40号で体験済み。ゴメン)。お金のある方には絶対おすすめ。

日本で一番安くクレサンキャンバスが手に入るのはテオ画材舗

信用できます。

クレサンキャンバスの接写写真はこちらで見ることができる(裏も表も)。

なお、インターネット上には知ってか知らずか、クレサンと称して日本製キャンバスを売 っ

ているサイトもある。くれぐれもご注意ください。

 

04年3月7日

テレビドラマは冬になると面白いのが多くなる。季節とドラマ作りに何か因果関係でもあ

るのか?

一番は「僕と彼女と彼女の生きる道」というドラマ。東京では火曜日夜10時からフジテ

レビ。次が「白い巨塔」(木曜日夜10時フジ)。「砂の器」(日曜日夜9時TBS)は映画

(松竹、野村芳太郎監督、丹波哲郎、加藤剛)の印象が強いのでどうしても分が悪い。ス

マップの中居君が殺人犯を好演しているが、中居君のアップが多すぎる。やっぱりアイド

ルドラマなのか? ちなみにキムタクの「プライド」(月曜日夜9時フジ)は全然ダメ(=

ほとんど見てない)。香取慎吾の「新撰組」(日曜日夜8時NHK)もだんだん見なくなっ

てしまった。そう言えば「僕と彼女…」もスマップの草g剛が主人公だった。ドラマはス

マップだらけ。

結局面白いのは「僕と彼女…」と「白い巨塔」だけ(=ちゃんと見ている)。2作を比べ

ると「白い巨塔」は所詮勧善懲悪ドラマに過ぎない。大人のためのヒーローものという感

じ。「僕と彼女…」には思想がある。その前のシリーズの「僕の生きる道」もよかった。

脚本は両作とも橋部敦子。世間ではテレビドラマは脚本が大事と考えているようだが、私

は演出の力も見逃せないと思う。「僕と彼女…」は平野眞、三宅喜重の演出。「僕の生き

る道」は星護、佐藤祐市、三宅喜重とある。ホームページで調べた。リンクはご容赦。

「僕の生きる道」は生死のこと、「僕と彼女…」は生殖と育児のことが述べられている。

つまり、生物としての人の道を考えている。生物は個体維持と生殖がその大きな営みであ

る。そして、育児は哺乳類としての人間の義務であり喜びだ。その根本のところを語ろう

としている。そして臭くならずうまい具合に仕上がっている。キムタクの「プライド」は5

分も見ていられないほど悪臭に満ちている。「白い巨塔」は単純な話だが丁寧にしっかり

作ってある。十分見られる。

と、本日は絵と全然(またはほとんど)関係ない話。

 

本日のクレサンキャンバスの話はコレクターの方へ。コレクターの方も絵を買うときにキ

ャンバスぐらいは確かめた方がいいかも。画家のスタンスにもよるが、ビニロンキャンバ

スに描いてあるような絵が数十万円もするのは疑問だ。「なんでも鑑定団」でも額を開け

て絵を取り出し、キャンバスや絵具を調べている。掛け軸でも絵具や紙などをよく見てい

る。

クレサンキャンバスに描いてあればまず間違いない。刑事ドラマで言えば裏が取れたと言

うこと。さらに絵具や画溶液が一級品なら文句はない。ま、つまりこれは私の絵。

画家のみなさんも絵を売る以上は最高の画材を使いってください。

日本で一番安くクレサンキャンバスが手に入るのはテオ画材舗

信用できます。

クレサンキャンバスの接写写真はこちらで見ることができる(裏も表も)。

なお、インターネット上には知ってか知らずか、クレサンと称して日本製キャンバスを売 っ

ているサイトもある。くれぐれもご注意ください。

04年3月14日

上にお知らせしてあるように5月7日から金井画廊での個展が始まる。お近くにおいでの

節はお立ち寄りの上ご高覧ください。

金井画廊きっての赤字作家、お荷物作家。まことに肩身が狭い。肩身は狭いが、だからと

いって売れるように描くこともできないし、絵がそんな風になったら会場に誰も来なくなる。

昨日も裸婦を描いた。描いているときにふと金井画廊の壁面が浮かんだりする。飾る壁面

を思って絵を描く絵描きなどいない(はず)。絵描きは絵に打ち込まなければならない。

そのためにはまず対象にのめり込まなければならない。裸婦を描いていたらモデルに惚れ

る。風景を描いていたら風になる。花を描いていたら蜂になる。それぐらいに対象と一つ

にならなければましな絵はできない。もちろん画廊の壁面などを思いながら描いた絵は駄

作に決まっている。

すっと引いた線が昔うまくいった絵に似ていると「ああいう風に描けないものか」などと

つい妄想が走ることもある。これもダメ。傑作に王道はないのだ。描法なんてない。描き

方なんて存在しない。1回1回が真剣勝負。新たな出会い。新たな戦いなのだ。わかって

いるがつい目先の一枚に欲が出てしまう。

また、図らずも置いた色が「クラシック絵画にもこんな色調があったな」などと好都合な

記憶が走ると、思わずその記憶をたどり、昔美術館で見た名画を追ってしまう。ここがま

た愚かなところ。

アカデミックとは描法を追い求めること。これは近代絵画の宿敵なのだ。

われわれの作業は瞬時の感動を焼き付けること。それをできる限り短い時間でやる。とて

も忙しい。昔うまくいった自分の絵とかクラシック絵画とか画廊の壁なんて考えている暇

はない。そういう暇がないように自分を追い詰める。そこがイッキ描きたる所以でもある。

 

絵具情報。プルシャンブルーはフランスのルフランがきれい。バーントアンバーはオラン

ダのヴァンゴッホが一番。だが、最近のヴァンゴッホはかなり濃い。イギリスのニュート

ンは緑系が美しい。ベルギーのブロックスはチタニウムホワイトがたまらなく深い。カド

ミウムレッドパープル、コバルトブルー、コンポーズドグリーンデープなどブロックスは

どれも高価だが他の絵具では代用できない。オランダのレンブラントのカドミウムレッド

パープルもずっと愛用していた。これならブロックに比べて遜色がない。

この前、大きな画材店に行って上記の絵具などを買ってきたのだが、その際ついでにキャ

ンバスもざっと見てきた。クレサンキャンバスに比べるなら、あの日本製のぺらぺらな布

切れは何なのであろう? 本当にみなさんあんなものに絵を描いているのですか? 大し

て値段なんて変わらないのだからクレサンキャンバスに描いたほうがいいって。これ、心

の底からの本心です。

日本で一番安くクレサンキャンバスが手に入るのはテオ画材舗

信用できます。

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なお、インターネット上には知ってか知らずか、クレサンと称して日本製キャンバスを売 っ

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04年3月21日

トランプゲームばかりしていると月日の経つのは夢のようだ。もう3月21日。

本業もままならないのに絵だけはけっこう描いている。本当に困った男だ。

それにしてもやっぱり不思議なのが、絵画市場。どういう絵が好まれるかというと、とに

かくきっちり塗ってある絵なのだ。色もたくさん使ってあったほうがいい。「なんでも鑑

定団」では物凄くはっきりしている。デッサンや水墨画は安い。さっと描いてある絵は認

められない。私の好きな絵は全然ダメ、という結論になる。

たとえば、ロートレックの絵。どうしても37歳で死んだとは考えにくい。ああいう色は

どういう精神から生まれるのか? あんな若い男があれだけの絵を描ける道理がわからな

い。貴族に生まれ、身体に障害を持った。印象派の時代の真っ只中のパリに暮らし、ドガ

を知り、浮世絵を知り、ゴッホとめぐり合う。そのようないろいろな幸運や不幸に出会っ

た。そしてあのような画面を生み出した。あの線、あの色。本当に不思議だ。

また、富岡鉄斎の絵画。鉄斎は丁寧に塗ってある絵を「あんなものは時間さえあれば誰で

も描ける」と言い放った。もちろん私にはそこまでは言い切れないが、感動が生み出す偶

然こそ純絵画の真骨頂だと信じたい。鉄斎の最晩年の絵はどれも美しい。透き通ったよう

に見える。緑が印象に残るが、赤も朱も黒もきれいだ。

やっぱり、イッキに描くしかないはずだ。とにかくこれで行くしかない。

とりあえず私は、肉は食わず、酒も飲まず、タバコもやらず、朝起きたらとにかく水浴を

して、それだけは守って20有余年絵を描いてきた(修業時代を除く)。こういう絵描き

は滅多にいないはずだ。だから、私みたいな絵も滅多にないはず。

それにしても、ロートレックのようには行かない。ロートレックの絵はまこと美しい。そ

れからロダンのクロッキーも素晴らしい。私は本当の絵とはああいうものだと思う。

 

本日のクレサンキャンバスは14番。しかし、むかし、少し使っただけなので正直コメン

トできない。絹に描くような筆触。ああ、死ぬまでにもう一度あの感触が味わえるか? 

でも倉庫の奥にまだ残りがあるかも知れない。もう一度探そう! または一儲けしよう!

探した方が絶対堅実である。

日本で一番安くクレサンキャンバスが手に入るのはテオ画材舗

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04年3月28日

先週の日曜日、金井さんが見えた。5月の個展のDM用の絵と3月30日から始まる開廊

5周年記念特別展の絵を取りに見えたのだ。そのとき去年の個展の絵を大量に持ってきて

くれた。去年はほとんど売れなかった。しかし、去年の絵は悪くない。今年勝てるかどう

か怪しいぐらい。あと1ヶ月と少し。この間に逆転満塁ホームランを打たなければやばい。

それにしても去年のあれらの絵が売れないのだから、世の中はまこと厳しい。本心、手の

打ちようがないという気持ち。

本日のヘッドページの絵は去年デジカメに収められなかったバラのバリエーション。「こ

れでダメなら勝手にしろ!」という気になる。

 

クレサンキャンバスの品番別の話もほぼ終わった。

土曜日の9時からやっている「世界不思議発見」という番組でベルギーは昔から麻の名産

地だったと言っていた。ベルギーキャンバスは昔から良いとされてきた。それが円高のお

かげかどうか、誰にでも買える時代になった。本当にいい時代が来ているのかもしれない。

日本で一番安くクレサンキャンバスが手に入るのはテオ画材舗

信用できます。

クレサンキャンバスの接写写真はこちらで見ることができる(裏も表も)。

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ているサイトもある。くれぐれもご注意ください。

 

本日の更新も「唇寒」のみです(この時期メチャクチャ忙しいのです)。

1月18日の更新は「今月の絵」改め「最近の絵」です。

なんと大量14点(自分が更新を怠けただけですが)。

 

11月23日の更新は絵画教室第8弾「静物を描く」です。

また、ひとまとめに絵画教室のページを新設しました。

 

04年4月4日

12月からの忙しい時期がやっと終わった。これからは個展の準備。ホームページも相当

放っておいたので、そろそろいろいろ整備をしなくてはならない。しかし、2回目の風邪

がなかなか抜けなくて困っている。ほとんど良いのだが、仕事がないと精神が弛んで風邪

の菌が居座るらしい。

今年はまだ桜も描いていない。本日が限界で今晩の雨で散ってしまうらしい。ま、勝手に

しろという気分。そんなに向きになることもない。明日元気だったら描きます。おそらく

描くでしょう。少し前は桜はライフワークのように毎年がんばった。去年もけっこう描い

た。だから去年まではがんばっていた。今年は風邪もあり、ちょっとダメかもしれない。

ま、家の前が桜並木なので、うんざりするほど見てはいる。私の観測ではまだ2〜3日は

十分大丈夫。キャンバスもいいのがある。

 

ところで、若い頃は真理だとか宇宙だとか宗教などにも物凄く興味があり、NHKの宗教

の時間は欠かさず見ていた。最近は全然見ない。さっきもやっていたが、あんなつまらな

いものをよく見ていたものだ。日曜日は宗教とか将棋とか日曜美術館とか音楽会とか、午

前中はテレビから離れられなかった。今は見ているのは将棋だけ。ビデオにとって、毎日

少しずつ昼寝の子守唄としてつけておく。だから見ていない。初めの2〜3分は見ている

が、すぐ寝てしまう。10分ほどで起きる。2時間番組だから1週間の昼寝にぴったり使

える。最高の睡眠薬。

たとえば、宇宙。これは無限である。このことを確認できればよい。138億光年などと

言われてもわからない。われわれが見える宇宙の限界が138億光年らしい。しかもこう

いう138億光年レベルの宇宙が無数にあるという説も出てきている(私はかなり信じて

いる)。とにかく広いのだ。一つだけでも十分広い。それがさらに無数にある。もうそれ

だけでいい。

お釈迦様の言葉もたくさん聞いた。どこまで本当かはわからないが、けっこう信用できる

と思う。お釈迦様とか、キリスト様とか偉い人は平和を願い命を懸けた。自分を犠牲にし

て人々の平和と繁栄を願った。それがどれぐらい凄いことか、よくわからないが、とにか

くそういう人の邪魔だけはしたくないと思う。こっちは自分が生きるだけで精一杯。世界

人類の幸せなど思いも及ばない。しかし、世間の人の9割以上はみんな自分が生きるだけ

でいっぱいいっぱいなのではないだろうか。「世界人類の平和と幸福」などと言う奴のほ

うが信用できない。ふつうそう考える。やっぱり夢がないか?

 

テオ画材舗は信用できます。

最近のクレサンキャンバスは下塗りがシルバーホワイトではないとのこと。本心、がっか

りした。しかし、いろいろ調べてみると、シルバーホワイトに負けないしっかりした地肌

を作っている。チタニウムホワイトでやっているとのこと。シルバーホワイトは猛毒なの

で使えなくなった。これまでは職人さんの健康検査を定期的に行うなどして対処してきた

が、公害の問題などもあり、ベルギー政府が禁止に踏み切ってしまった。どうしてもシル

バーホワイトを望むなら膠引きの生地を買い(クレサンでは「グルー」という)、自分で

地塗りを作るしかない。ただし、猛毒の上に、普通に乾かせば、乾くのに半年もかかる。

クレサンの工場には特別な乾燥室があるのだ。あんなに乾いてしっかりしたキャンバス地

はクレサンだけである。

クレサンキャンバスの接写写真はこちらで見ることができる(裏も表も)。

なお、インターネット上には知ってか知らずか、クレサンと称して日本製キャンバスを売 っ

ているサイトもある。くれぐれもご注意ください。

 

04年4月11日

ホームページの整備よりやっぱり個展の準備が先になってしまう。個展の準備といっても

たくさん絵を描くだけ。つまり描きまくる。ま、他にパンフの作成などもしたい。これは

例年のことだが、なかなかできない。すると、またホームページの整備が遅くなる。

ホームページの更新はけっこう大切な仕事なのだ。

新しい絵の展示もできる。たとえば、このごろ大量に描いているから毎日新しい絵を出す

こともできる。ずらりと並べることもできる。絵の一部分を拡大することや斜めから写真

を撮り、マチエールを見てもらう方法も可能だ。ホームページにはまだまだ可能性がある。

とにかく、毎週50ほどのアクセスがある。これは大変なことだ。ホームページをもっと

大切にしなければ。

と言いつつ、なかなか思うようにいかない。できるだけ早めに何とかします。

 

テオ画材舗が開店してそろそろ1ヶ月なる。店長の話ではまだほとんど売れないらしい。

実に不思議だ。世界中のキャンバスの中でクレサンキャンバスに勝るものはなく、それが

円高もあり、実現可能な価格で手に入るのだ。もっともっと売れてもよさそうなもの。

私の知る限り、クレサンキャンバスを使っている人はフランス在住画家とか技法に相当う

るさい美大卒の先生など。これはクレサンキャンバスの信用でもあるわけだ。この前誰か

がネット上でクレサンキャンバスを引き合いに出してキャンバスの白さについて語り、ク

レサンキャンバスを非難するような発言をしていたが、これはただ恥ずかしいだけ。ベル

ギーが麻市場の本場で、油絵具発祥の地であることを考えてもクレサンキャンバスの優位

は間違いない。このキャンバスが手に入るのに何で日本製のへなへなキャンバスを購入し

なければならないのだろう。第一、キャンバスについて語るほどみんな絵を描いているの

だろうか? おそらく私は日本でも数少ないキャンバス絵描きだと思う。特にここの所、

毎日何枚もの油絵をキャンバスに描いている。もちろんクレサンキャンバスだが、17歳

から油絵を始めて、ありとあらゆるキャンバスを試してきた人間だ。文句があるなら私の

アトリエに来ていただきたい。キャンバスだらけで、油絵だらけだ。そのうえ、17歳ま

でも油絵具の中に育った。私の父も油絵描きだからだ。私は難しい理屈は知らないが、手

の感触で良いキャンバスはわかる。良い絵具も画溶液も筆も何でもわかる。絵描きなんだ

から当たり前だが、私みたいなのはそれほどいないと思う。みんなけっこう描いてない。

私だってオフには全然描かないもの。ここ2〜3週間は史上でも指折りの多作画家。第一

油絵でクロッキーをやっている絵描きなんていないと思う。そういうとまた油絵はじっく

り描くものなどという声が聞こえる。ふざけてはいけない、美術出版社の「油彩画の技術」

(グザヴィエ・ド・ラングレ著、黒江光彦訳)によれば、油絵の技法の真骨頂は速描き

にある、とちゃんと書いてあるのだ。ロートレックだってドーミエだってゴッホだってルー

ベンスだってベラスケスだってピカソだってみんなみんな速描きなのだ。こっちは世界中

の絵を直に見てきて言っているのである。テオ画材舗の店長なんてもっともっと本物を直

に近くで見ているらしい。

そういえば、日本の富岡鉄斎も、もちろん油絵ではないが、抜き身を見せぬ速描きである。

日本がのことは知らないが(おそらく同じ理屈だと思うが)、速描きなら濁らないし、発

色もいいし、乾いてからも割れないのだ。

新しい油絵とは私のクロッキーであるはず、なんだがなぁ……。どうもおかしい?

いやいや、30年もすれば私の言も世間に頷かれるはず。ま、それまで生きているのは難

しい。わが家の経済状況ではこの4月は越せない計算なんだから。もちろん、何が何でも

生き抜いてみせる。絶対に負けない!

風邪も治って、多少ハイテンションです。スミマセン。

クレサンキャンバスの接写写真はこちらで見ることができる(裏も表も)。

なお、インターネット上には知ってか知らずか、クレサンと称して日本製キャンバスを売 っ

ているサイトもある。くれぐれもご注意ください。

 

04年4月18日

ここのところよく出かける。15日には久しぶりに上野に行った。そして、昨日はなんと

郡山へ。福島県の郡山である。帰りが遅くなってしまったので駅前のビジネスホテルに泊

まった。そして今日は猪苗代湖へ行った。車が壊れたりして、やっと少し前に帰ってきた

ばかり。今もまだ意識は朦朧としている。頭の中は横山大観の絵みたいになっている。富

岡鉄斎ならいいのだが、そうはいかない。

私みたいな出不精にとっては大旅行である。

時間を逆に話を進める。

帰ってくると、郵便が来ていた。「美術の窓」が1冊。最新5月号の202ページに金井

画廊の広告と記事に2点掲載されている。今年は裸婦ではなく静物とバラ。暇な方は立ち

見してください。

車の故障はバッテリーの寿命から。親切な男性が充電してくれた。が、もう寿命なのでエ

ンジンが切れない。白河でやっと見つけたイエローハットで買う(6000円弱=安い?)。

今朝、猪苗代湖を初めて見た。太古を思わせる素晴らしい眺め。空気も最高。なんとまだ

桜が開花前。この湖に恐竜がいてもまったく違和感はない。それぐらい原始的。数億年タ

イムスリップした思いになった。雪が残る磐梯山も美しいし、その左奥に三国峠だろうか、

さらに真っ白な山々がある。とにかく凄い風景。でっかい自然だけがドンと広がる。猪

苗代湖は物凄くでかい。近づくと透き通る水をたたえている。まさしく山の中に突然現れ

た海、といった感じか。日本も捨てたもんじゃない。まだまだ美しいところだらけだ。

実は、私はこういう風景は苦手である。人の気配がないと絵にならない。しばらく走ると、

野口英世が向こうから走って来そうな田園風景にぶつかった。もちろん磐梯山や猪苗代湖

も画面に入れた。F15、F6、F3と3枚やっつけた。そのあと、山を降りたところで

桜の花吹雪に出会い、これを6号に1点。

上の絵は前の日に描いた。風が強かった。強風と格闘しながらP20、F6、F3と都合

3枚。郡山の農家の屋根は赤が多い。それが何とも重厚で味がある。赤い屋根が重なり合

い、不思議なコントラストを見せる。黒澤明の「赤ひげ」の瓦屋根よりいい。なんたって

こっちは現実。実際に今生きている人々が暮らしている屋根だ。

屋根の集落から後ろを振り返ると阿武隈川が流れている。流れは見えないが、大河を予感

させる広大な景色。春の陽気に霞んで見事な眺望。これも6号に1枚。手前の菜の花の黄

色がありがたい。

ところで、なんで突然郡山なのか? 郡山には古い友人が一人住んでいる。S先生。しか

し、彼女のことを思い出したのは郡山の街中を走っているとき。今回はまったく関係ない。

実は、私の絵を何点か買ってくださったW氏に図々しくも「郡山にいい画廊はありません

か?」などと大胆にして無責任な質問をしてしまった。真面目に考えてくださったW氏は、

なかなか難しいとのご返事。それでもかまわず、暇に任せてどんどん押しかけたのだ。

本当にごめんなさい。

そして、増賀氏をご紹介くださった。すなわち採用試験である。私は訳がわからぬまま大

量の絵を額装して積んで行ったので、見ていただくことができた。とりあえず数点置いて

いただけることになった。上にお知らせした「牡丹展」にも出展してくださると思う。こ

のホームページをご覧の郡山近辺の方、是非ご高覧ください。

W氏は夜遅くまでご案内頂き、まったく頭が上がりません。貴重な土曜日を奪った罪の重

さを深く心に刻んでおります。本当にごめんなさい。

 

そして、上野。事情ができて公募展を見なければならない羽目に。光風会と創元会、モダ

ンアートを見た。もちろんわが等迦会よりうまいが、中味はほとんど同じ。感想としては

まず絵を描く分量が全然足りない。話にならない。もっともっともっと描かなければ、明

治期から真面目な画家たちの絵が並んだ上野の都美術館の壁が泣いている。

それから、みなさん頭脳明晰。頭が良すぎる。左脳の使い過ぎ。もっと対象をよく見てバ

カになって描いたら如何なものか。

それから、写真を見て描いている風景がとても多い。写真を見るのは必ずしも悪くはない

が、見て元の写真の方が楽しい様では話にならないだろう。どの風景にも風もないし、大

地もない。あれだけ描けるシスレーやモネが外で三脚を立てて描いたのだ。何で下手な人

間が写真を見ながらエアコンのきいた安全な画室でのんびり描けるのだろう。モネやシス

レーに申し訳ないと思わないのだろうか? モネやシスレーを尊敬していないのだろうか?

私は物凄く尊敬している。そして、実際に美術館などでモネやシスレーの絵に出合うと尊

敬はますます高まる。それは私が20歳の頃と全然変わっていない。われわれのようなぺ

いぺいで下手な絵描きは最低でも15号ぐらいのキャンバスを持って外で描かなければダ

メだ。そんなことは当たり前である。まず頭を冷やした方がいい。絵を描くということは、

少なくとも3000年レベルの時空の中であらゆる偉大な画家たちと一体化することなの

だ。構図だとか色彩だとか新しさだとか、寝言を言ってないで、まず先人の絵をよく見て、

心の底から頭を下げなければいけない。「神聖」などという言葉は使いたくないが、絵を

描くことは神聖な行いなのである。言いたくはないが言わなければわからないから。

 

最後に上野の「栄光のオランダ・フランドル絵画展」。一番の目玉はフェルメールの「画

家のアトリエ」。フェルメールの遺作の中では最大の絵。もちろんいい絵である。文句は

ない。もっと近くで見せてもらいたい。筆勢が見たいのだ。現代の日本の細密画とは異な

り、フェルメールの絵には筆の痕があるはず。それが自然に物質に見える。もちろん人の

肌にも。そこが真似のできない凄さなのだ。フェルメールもいいが、ルーベンスの傑作が

3点も来ていた。夢のような幸せ。晩年の自画像と裸婦2点。小品は間違えなくルーベン

スの真筆。もちろん裸婦の描写は抜群だが、手前の布の処理など学ぶべき点は限りない。

巨大な油彩画もルーベンス自身の筆が十分感じられる。傑作だと思う。階段を上ったとこ

ろにルーベンスより5〜6歳ほど年長の画家の縦長の絵は良かった(名前を忘れました)。

レンブラントもやっぱりいい。いや、それにしても私はルーベンスが好きだ。理屈では

なく不思議な親しみを感じる。20歳の頃から惹かれていたが、今でもその思いは変わら

ない。人間の気持ちというのは変わらないものである。

 

本日はキャンバスの話はお休み。それでも テオ画材舗のクレサンキャンバスは安いし、

信用もできる。

クレサンキャンバスの接写写真はこちらで見ることができる(裏も表も)。

なお、インターネット上には知ってか知らずか、クレサンと称して日本製キャンバスを売 っ

ているサイトもある。くれぐれもご注意ください。

 

04年4月25日

牡丹が終わった。絵もしばらくお休み。週末ごろからバラが咲き始め、芍薬もほころぶは

ず。また、キャンバスがない。今日は忙しくて張れなかった。私のキャンバスは無論クレ

サンキャンバスだから晴れてないと張れない(決して洒落ではございません)。明日から

は曇りらしいから今晩張るしかないか? 夜遅くトントンやるのはまずいなぁ、やっぱ。

どうすりゃいいんだ? 張る前に地塗りしておくという手もある。本当にそんな手がある

のだろうか? ま、キャンバスの白も張る前に塗ってあるのだから、絵描き個人の地塗り

だってしていい理屈ではある。とにかく何とかします。

 

ところで、私のフランス行きはなくなった。もちろん懐具合は初めから良くない。「そん

なのかまわず借金してでも行っちまえ!」と思ったのが19日ごろ。ところが、パスポー

トがない。取るには1週間はかかると言うから、フランス行きは完全ボツ。行くとすれば、

行けるのは26日頃(つまり明日)からだった。娘がフランスにいる間(8月頃帰国)に

なんとか行きたいものだ。

 

金曜日に最新の芸術新潮をゲット。根津美術館でやっている「南宋絵画」展の特集。ほと

んど見尽くした絵ばかりだが、このようにまとめて見られることはない。96年10月の

五島美術館「牧谿展」にも匹敵する大企画展。前期が4月17日〜5月2日。後期が5月

3日〜16日。後期はほとんど私の個展と重なっている。全国の絵画を愛する人ーぉ! 

5月7日以降東京に集結してくださぁーい。

もしかすると、MOA美術館の伝梁楷の「鷺図」が来るかもしれない。鷺図についてはわがホー

ムページの絵の話「雪舟の想い」の冒頭に図版付きで詳しく述べてある。そのほかの南宋

絵画についてもたくさん書いてあるので是非ご再読いただきたい。

 

テオ画材舗を覘くと、今月はクレサンキャンバスの12番が安い。

12番は日本製キャンバスでは絶対に味わえない極上のベルギーキャンバス。

このチャンスに是非味わってはいかが。

クレサンキャンバスの接写写真はこちらで見ることができる(裏も表も)。

なお、インターネット上には知ってか知らずか、クレサンと称して日本製キャンバスを売 っ

ているサイトもある。くれぐれもご注意ください。

 

 

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