『裸婦習作2』 油彩・キャンバス P50号
STUDY OF NUDE about1978
OiI on canvas 116.7×80.3cm
わたしが通っていた美術研究所は美大を目指す受験生を対象とした進学用の美術研究
所というより一般の人が思い切り絵が描けるような所だった。もう美大へは行かない
けれども絵は止めない、という人のための美術研究所だ。人体油彩、彫塑、版画、陶
芸、石膏デッサンなどの工房があり、会員は自由にいろいろな作業ができる。土日は
クロッキー会。朝、午後、夕、夜と4回。土日で8回クロッキーができる。会員は特
別価格だった。わたしは土日で4回ぐらいは出たと思う。
研究所に対して、いろいろ細かい不満はあったが、全体としてはいい研究所だったと
思っている。今でもやっている。鷹美術アトリエ村という。最寄りの駅は目黒。住所
は港区。最近目黒通りの下を地下鉄が通ったのでJR目黒駅より近い駅ができた筈だ。
(残念ながら現在は閉校となってしまいました)
この絵はその研究所の発表会のとき奨励賞をもらって1か月間研究費が免除された。
このモデルは抜群にいいモデルだった。若いし筋肉質で、とにかく動かない。モデル
なら動かないのは当り前とお思いだろうが、20分に5分休憩を5回(6回だったか
もしれない)。じっと動かないというのは重労働なのだ。よほど強い意思がなければ
すぐぐらぐらする。また、20年前のモデルで20歳代という人も珍しい。滅多にい
ない。そのうえ筋肉質のモデルとなるとさらに少ない。筋肉質ということはスポーツ
とかダンスなどをやっている人だ。こういうモデルは身体にメリハリがあり、古代彫
刻のようで制作意欲を掻き立ててくれる。さらに、このモデルは顔がよかった。
美人だからというのではない。なにか虚無的な表情に引かれるものがあった。もちろ
んこのモデルとおしゃべりをして身の上を聞いたわけではない。
この絵には白と黒を一切使っていない。黒は今だに使わないが、白を使わない絵描き
は珍しい。しかし、このようなハンディをつけると絵が緊張する場合もある。もちろ
ん、最近は白はじゃんじゃん使っている。