唇 寒(しんかん)集74<26/3/7〜>
26年8月8日(土)
悠久と現実
「大宇宙の長大な時間のなかで一瞬存在させていただい
た」と先週書いた。それはおそらく真実だろう。
でも、われわれは現実に生きている。
3日前も自動車が故障して路上立ち往生寸前までいった。
ギリギリセーフ。修理に5万円以上のカネがかかったけど、
廃車とはならなかった。こっちもひとまずハッピー。
……とまぁ、現実は甘くない。
現実と言えば、ウーバーイーツ配達業は衰えるいっぽう
の体力をなんとか維持するためにも欠かせなくなってい
る。その前に貴重な収入源だ。ウーバーよりメルカリ複
製画販売だろが! と叱責の声も聞こえるけど、ウーバー
は続けないといろいろヤバい。
インスタグラムやスレッズを見ていると、絵を売る方法
なども述べてある。売れている画家が得意になって成功
談を語っている。
いっぽう売れない画人の嘆き動画も少なくない。
私みたく60年近く絵を描いてきた人間にとっては、天上
界から下界を見ているみたいな他人事?
まったく「大宇宙の長大な時間のなかでの一瞬できごと」
に過ぎない。
もちろん私自身その下界の真っ只中にいるんだけどね。
絵を描く意味とか芸術の存在意義みたいな哲学的疑念を
吐露している動画もある。
どんどん描くというが、膨大な駄作の山をどうするんだ
という大問題もあるよね。
はっきり言おう!
知ったこっちゃない!!!
何がなんでも描くのだ。どうなってもいいから描く。描
かなければ、己が生きてないってこと?
ま、もっとも私もここのところ2週間ほど描いていない。
2週間死んでいた? いや生きていた。次の作画の準備期
間とでも言い訳しておく。
焦ることはない。
大丈夫、車も滅多に廃車にならないけど、人間も滅多に壊
れない。2週間ぐらいのスパンはなんてことない。そう言え
ば、ここのところまったく泳いでいない。プールは人だら
けでまともに泳げないもんね。夏はお休みだよ。50年前と
は逆現象。
大雑把に行こう!
何も気にすることはない。
絵は描きたいように描けばいいんだ。それが本当の絵だ。
泳げるときには泳ぐ。泳げば溺れることもあるけど、泳が
なくても溺れない。俺たち陸上動物だもんね。ダイジョブ、
ダイジョブ。
10万年も経ったら《モナ・リザ》だって消えてなくなって
いる。われわれの絵が数年後に廃棄されたってどうという
ことはない。
10万年と数年? 40億年の尺度なら両方とも一瞬だ。
26年8月1日(土)
愛せねぇ〜〜
絵が巧いからって、それが何だっていうの?
……というのが最近の思考。ま、ずっと前から思ってい
たんだけどね。
たとえば、シュヴァイツァー博士なら凄いよね。中村哲
博士もアフガンの砂漠地帯を緑にした。誰がどう見たっ
て偉大な人物。そりゃ、キリストさまもお釈迦様も偉大
だろうけど、現実感で言ったらシュヴァイツァーとか中
村哲だよね。ナイチンゲールもいるし、マザー・テレサ
もいる。いやいや、日本中の病院に、苦しんでいる人を
治そうとしている医師がたくさんおいでになることも確
かだ。
医師じゃなくても、橋を架ける人、トンネルを掘る人、
災害救助の人……考えたら切りがない。無名でもみんな
偉人だ。
絵が巧いからってそれが何なの? と言いたくなる。
SNSでもけっこう見かけるけど、絵が巧いだけで威張って
いる人って少なくないよね。
もちろん、美術史上にも威張りンボはたくさんいた。
ま、私にとっては牧谿(1280頃活躍)とか雪舟等楊(1420
〜1506)とか浦上玉堂(1745〜1820)とか、本当にありが
たい偉大なる画人だ。まだたくさんいるけど書き切れない。
ヨーロッパにもいっぱいいる。私にとってはなくてはなら
ない画人たち。医師でも土木技師でもレスキュー隊員でも
ないけど、私には限りなく大切な先人たちだ。
で、いっぽう私自身はどうなんだろう?
道路にゴミが落ちていてもまずは拾わない。ま、自分でゴ
ミを捨てることはないし、落としたら100%拾う。自分のゴ
ミは出さない。しかし、車の運転中、道路を譲らないこと
を原則としている。サンキュウー事故ってけっこう多いか
らね。もちろんクラクションはほぼ絶対使わない。
ウーバー配達の仕事も、原則お客さんは腹をすかして待っ
ているから、間違えないように何度も確認して配達してい
る。が、完璧ではない。チョー有能な配達員ではないと思
う。
自分のレベルはだいたいわかる。大した人間じゃない。犯
罪者じゃないけどね。怠け者で卑怯者かも。狡猾?
最初に述べた偉大な先人たちに比べたら、カスもカス、要
らねぇ〜〜っていうレベルだ。
まぁ、そんなものだ。
で、そういう人間が絵ばかり描いてきた。くだらない人生
だ。その絵だって知れている。
だけど、しようがないんだよね。これが自分だもん。
大宇宙の長大な時間のなかで一瞬存在させていただいただ
け。お許しください。
インスタグラムにアップするために30年来の自分の絵をい
ろいろ見返している。自分の人生を俯瞰しているみたいだ。
まったく情けない。せめて愛すべき人生? 愛せねぇ〜〜〜。