唇 寒(しんかん)集27<07/9/30〜08/1/26>

 

07年9月30日

油絵は長持ちする。この前、島根県立美術館で見たコローの絵など、180年前の絵とは思え

ないほど奇麗だった。180年といえば、凄まじい年月だ。モノが耐久する限界をはるかに超

えている。自動車など10年がいいところ。この6月まで頑張ったわが三菱シャリオは13年も

走った。だけど、たった13年だ。これに比べると油絵は凄い。

たとえば、180万円で買っても、1年につき1万円という計算になる。1ヶ月833円、1日28円弱

になってしまう。チョー安い。もちろんコローの絵が180万円ということはない。生存時で

も500〜600万円は下らなかっただろう。私が見た絵はM25号(50×80cm)ほどの絵で、この

ときはもうコローは巨匠だった。今なら、億の単位が付くかもしれない。少なくとも9千万

円とか?

180万円の自動車は12年乗った場合、1年15万円。1ヶ月12500円、1日417円だ。こうして計算

すると、車も高価ではない。誰かが車は割安な機械だと言っていた。少し前のコピー機など

物凄く高かった。

で、私の絵だが、個展会場で付ける額面で計算してもとても安い。私の絵はベルギー製のク

レサンキャンバスとベルギー製のブロックス絵具で描いてあるから、とても丈夫。絶対長持

ちする。100年は大丈夫だと思うが、30年として計算してもメッチャ安い。

こういう計算も、このホームページ上で何度もやってきた。

ああ、馬鹿馬鹿しい。

1日30円だっつったって、1点30万(10号の場合)もするんだから、買うわけないよ。自動車

は重い荷物を積んで何キロも走るけど、絵は壁に掛かっているだけだもん。何の役にも立た

ない。

もっとも、地球が終わりそうなこのご時勢、「役に立つ」って何だ? と言われると、考え

込んでしまうけどね。

上の絵は、絵が大好きな娘の友だちがちょっとだけ購入を考えた10号。いい絵だと思うけど

ね。安い買い物だよ。

本日は「唇寒」バックナンバー26を更新しました。これで先週分まで更新終了。

 

07年10月7日

もう1ヶ月以上裸婦を描いていない。町田の美術館のアトリエが取れなかったことと私の個

展が重なったためだ。今も豊橋にいる。個展の真っ最中だ。

豊橋の人は東京の人に比べると寛容なところがある。豊橋に限らず、地方の人は誰もみなこ

んななのかもしれない。他の人を認める余裕がある。私など、そういうところが全然ない。

心が狭い。豊橋で、いろいろな人と話していると、自分の狭量を思い知る。深く反省してお

ります。

やっぱり、東京は競争が激しい。ものを客観的にじっくり見る目を失う。気をつけなければ

いけない。とは言っても、私の場合は、父親も東京で、あの人は私以上に排他的。そういう

人に物凄く影響を受けているから、ものを見るときに何でもまず批判的に見てしまう。特に

新しいものなどまったく認めない。排他的で保守的だ。

で、上の絵は寛容な豊橋の方々にたいへん評判がいい。銀座展の後に描いたから。豊橋展の

ための描き下ろしみたいなものだ。今年最後の酔芙蓉である。

本日はヘッドページ以外の更新はありません。ブログはスタイルなどのこと。

 

07年10月14日

豊橋に来て10日以上経つ。全然絵を描いていない。よく歩くし、水泳もまあまあやってい

る。その分、よく食べるから体重は70キロと71キロを往復している。

そろそろ絵が描きたくなってきた。あの、指の先が筆になって、身体中の血液が画溶液になっ

ちまう感じを忘れそうだ。あああ、せっかくあの感じを覚えたのに、これじゃあ何にもなら

ないよ。情けない。

本日は豊橋展の最終日。これで本年度の個展の予定はすべて終わった。早っ。

ああ、これから5ヶ月間、やることねぇ。

何やろうかな?

とりあえず風邪でもひくか。

本日絵画の更新はいたしません。この絵は買っていただきました。水曜日からのアップだっ

たので、もう少しロングランします。なお、更新曜日を変更するかもしれません。日曜日の

夜は混雑気味なので、木曜日の夜とかに更新日を変えるかもしれません。

本日はヘッドページ以外の更新はありません。ブログは「印象派時代のパリ」などのこと。

 

07年10月18日

10月14日(日)の更新で、

 

ああ、これから5ヶ月間、やることねぇ。

何やろうかな?

とりあえず風邪でもひくか。

 

と書いたら、本当に風邪を引いてしまった。寝込むほどの重症ではない。なんか頭が重くて

冴えない感じ。仕事も出来る。一人でやっているから寝たいときに寝る。だから、そんなに

悪くならない。

また、

 

更新曜日を変更するかもしれません。日曜日の夜は混雑気味なので、木曜日の夜とかに更新

日を変えるかもしれません。

 

と書いたので、本当に変えた。しかし、変えてもどうもFFFTPの調子がよくないみたい

だ。

ダメかもしれない。

本年度予定していた個展が全部終わって、考えてみると、やっぱり、いまから堅気の仕事を

するのは不合理だと思う。絵だってそこそこ買ってもらっている。もっともっと絵を精進す

べきだ。ま、サイは投げられた、というかずっと前に投げられているのだ。今からジタバタ

してもどうしようもない。「40にして惑わず」と言うが、こちとら、57歳でも迷いっぱ

なしだ。情けない。

本日はヘッドページ以外の更新はありません。ブログは「印象派時代のパリ」などのことが

続けている。

 

07年10月26日

ブログにも書いたとおり、土曜日の朝が空いているみたいなので、更新は土曜日の朝に決め

た。ま、「金曜日の夜から土曜日の朝」ということにする。

風邪はいまだにすっきりしない。熱などはないが、鼻と喉がイマイチ。今日もプールを休ん

だ。どっちみち、プールは年寄りの冷や水だから、無理はしないに限る。

モデルは、頼んだ日に来るから絶対に描く。バラも咲いている時期に描いておかなければな

らない。もちろん、バラ以外の花すべて同様だ。春先は牡丹、続いて桜、次がバラで、その

あと芍薬、夏のいろいろな花があって、芙蓉となる。秋のバラはいまが最盛期。まだまだ描

ける。

風景はANAの旅で描く。しかし、ANAの仕事はでかい。いい絵が見られて、日本全国旅が出来て、

絵を描いてもいいと来ている。ああ、普段から風景をやっておいてよかった。

裸婦と花と風景、これらを合計すると、これはけっこうな分量だ。毎月40〜50枚。年間500〜

600枚に及ぶ。10年で5000枚。30年で15000枚だ。このペースで描き続ければそうとうの画境

に達するだろう。

しかし、なかなか上手くゆかない。

10月で個展が終わって、11月からの生活を考えて、少し手を打ったが、全然反応がない。世

の中甘くない。もちろんすぐ次の手を打つ。絵が売れてくれれば、一番いいが、絵なんて滅

多に売れない。このホームページのギャラリーももっともっと更新しなければいけないかも。

本日はヘッドページ以外の更新はありません。ブログは「いい絵の判定」について。

 

07年11月2日

移動性高気圧が行ってしまうとまた雨になる。昨日からぐずついている。明日から少し回復

して、月曜日からはまた雨模様とのこと。寒暖の差も激しい。風邪がなかなか抜け切らない。

私は鼻が悪くて、そのせいで喘息もある。尿酸値は下がったが、油断できないので毎日水は

2リットル以上飲む。水分を取ると鼻水が止まらない。どうも上手くいかない。

絵は適当に描いているが、等迦展の100号を始めなければならない。例年なら11月の末

に搬入だから絶体絶命だが、今年は来年の2月なのでかなり余裕がある。しかし、私は外で

描くので、あまり寒風吹きすさぶようになってからでは描けない。やっぱり11月が限界。

ギリギリ12月中ごろか。暖かい日なら真冬でも大丈夫だ。しかし、前から言っているよう

にキャンバスがない。小さいキャンバスは今のところだいぶある。それも最高級のヤツだ。

やっぱり描きやすい(ような気がする)。

100号は並のキャンバスでいいが、クレサンキャンバスを使う。荒目か中細目になる。や っ

ぱりこれは並のキャンバスではないか。

収入のルートを作ってから、キャンバスを買って、あとはじゃんじゃん描く。当たり前のこ

とだが、なかなか上手くゆかない。とりあえず今日はプールへ行く。これでまた鼻水が止ま

らなくなる。だけど、プールは止められないものね。

本日はヘッドページ以外の更新はありません。ブログは『ゴッホの復活』を読みながら、ゴッ

ホのことなどを書いている。

 

07年11月9日

この前、道を歩きながら考えた。

小説は人を感動させるのに骨が折れない。文章だから簡単だ。山本周五郎も人を感動させる

のはたやすいと言っていた。

絵描きは簡単に人を感動させられない。少なくとも泣かせることはかなり難しい。できない。

ま、これは表現として絵画は不利だということだ。

しかし、絵画は作家が見えないという一面もある。絵画に限らず彫刻でも工芸でも同じ。音

楽も同様かも。むしろ、文学のほうが特殊なのかもしれない。

芸術や芸能に携わる人間は自分を全て曝け出す必要がある。

落語家も下半身すべて晒せと師匠に学ぶ。

お笑いタレントは、まさに身体をはって笑いを取っている。

「そこまでやるか」と思わず声が出る。

小説家は自分をゼロにしなければ絶対に売れない。女流作家もすべて捨てている。

絵描きも本当の本物はおのれを捨てている。長谷川利行(1891〜1840)は捨てている。梅原

龍三郎(1888〜1986)と安井曽太郎を比べると、梅原は「捨てているな」と感じる。安井は

まだまだ気取っている。横山大観も捨て切れていない。富岡鉄斎(1836〜1824)は捨ててい

るなどというレベルを超えている。

フランスのロダンは捨て切っている、と心底思う。

私が塾を始めるとき父が言った。

「お前、先生になるなんて思うなよ。子供相手の駄菓子屋のオヤジになるんだと考えろ」

23年間、中学生のクソガキどもに「禿、はげ、ハゲ」と呼ばれて塾をやった。父親の言葉

は実にありがたいものだ。

ほとんどの絵描きはお笑いタレント以下。お笑いタレントは立派な表現者だ。自分でネタを

考えて、己を無にして舞台で頑張っている。暖かい部屋で写真見ながら絵を描いて、芸術家

でございますと踏ん反り返って、立派な作品ができるわけがない。頭から冷水でも浴びろ。

なにが文化勲章だ! ふざけるな!!

画友のTさんがブログを始めました。是非ご覧ください。こちらです。下のシヌエッサのアフロ

ディテを教えてくれたのもT氏です。

 

07年11月16日

いま、町田のギャラリー・マチスで「さようなら ギャラリー・マチス展」をやっている(11

月25日まで)。長い間(玉川学園時代を加えれば約25年)、町田の絵画発表の場として

頑張ってこられたが、ついに閉鎖となってしまった。最後の展覧会を見てください。私は3号

のバラを1点出している。

先週、「中学生のクソガキども」と書いたが、誤解のないように言っておくと、私は「クソガ

キ」が好きである。週に2〜3度は腹の底から笑わしてもらった。こんなに笑ってお金もらっ

ていいのだろうか? と悩んでしまった。関根勤みたいだった。

 

ブログで書いてきたが、『ゴッホの復活』はゴッホの贋作の話だった。で、今日も考えてい

たが、やっぱりゴッホは絵が下手だ。下手だから贋作を作られるのだ。だって、雪舟の『破

墨山水』をそっくりに描くのは無理だもの。宮本武蔵の『枯木鳴鵙図』も絶対に描けない。

らしく描くこともできない。中国の夏珪、梁楷、牧谿などに至ってはもっとますます無理。

 

07年11月23日

昨日フィラデルフィア美術館展を見たが、やっぱりゴッホは凄いね。

なに、あの絵!?  

贋物かもしれないから大きなことは言えないけど、誰がどう見たって下手だろ。

あんな下手な絵を見せられると胸がスーッとする。ま、溜飲が下がる、とまでは行かないけ

ど。

ゴッホは下手だって。

もっとも一昨日描いた私の絵も十分下手だから、貶しているわけじゃあない。

だいたい「あいつはバカだからね」という場合。もちろん、あいつは本当にバカなんだけど、

労わりはある。バカだからってもう付き合わないわけじゃない。じゅうぶんバカだけど、そ

れはお互い様だから、死ぬまで付き合うよっていう気持ちも入っている。

私はよく「絵描きはみんなバカだ」と言うが、そのときのバカにも「ご苦労さん!」という

気持ちが入っている。だって、世間にある99.99999%の絵はクダラナイ絵で、みんなそれを

一生懸命描いているのだ。私もたった今、100号3枚、20号1枚、6号2枚の地塗りを終えた。

絵具まみれで頑張った。まったくバカだ。バカは可愛いのだ。

ゴッホもまさかあの赤ん坊の絵があんなに後生大事に展示されることになろうとは思っても

いなかったろう。だってゴッホが好きな絵はミレーであり、モネであり、ブグロー(フラン

スアカデミズムの物凄くうまい絵)なんだから、あの赤ん坊がいいなんて思っていないに決

まっている。

昨日のフィラデルフィア美術館展では、コローの風景がよかった。でも島根県立美術館にあ

るほうがもっといいかも。両方とも、130年ぐらい前の絵だ。信じられないぐらい美しい。

また、ルノアールの「ルグラン嬢の肖像」(やっぱり130年ぐらい昔の絵)もたった今描き

上げたといった新鮮さ。びっくりする。やっぱり油絵はいい画材かも。

私にとっての圧巻はドガだが、若いころ(34歳ころ)の絵だった。ご存知のように私は晩年

のパステルが好きだ。特にクロッキーのようにすばやく描いてある絵。

このホームページのギャラリーを修復しようと考えている。明日以降ちゃんと始めます。ま

た、高雄氏の友人で、もちろん私もよく知っている人がページを開いたが、このブラウザは

調子が悪くてうまくリンクできない。気に掛けています。近いうちにやります。

 

07年11月30日

まず、1週間が早いのに驚く。このホームページを修復しようと書いてから何もしていない。

しかし、やっぱりぜひとも修復したい。

ブログでは先週ここに書いてしまった「世間にある99.99999%の絵はクダラナイ絵で」とい

う箇所の言い訳をやっている。

それじゃあ、残りのクダラナクナイ絵はどういう絵じゃ、と聞きたくなる。

美術館にでも入っているのか。

基本的に美術館は悪くない。いい絵が多い。しかし、贋作もあればクダラナイ絵もあるには

ある。

はっきり言って、今の多くの美術館の所蔵方法には疑問がある。ま、しかし、とりあえず現

状で行くしかないかもしれない。絵の判断基準はまことにむずかしい。

それにしても酷い絵もある。印刷物でだが、所蔵作品の裸婦のクロッキーを大量に見たが、

寄贈はいた仕方ないにしても、なぜこの裸婦を購入するのか、さっぱり分からない、という

絵もけっこうあった。絵がわからない人が購入権を持っているのだろうか? この絵描きの

親戚が購入権を持った人なのか? ま、実物はもう少しましのかもしれない。裸婦は一目見

ればわかるから。本当にびっくりする。

 

昨日のプールで久しぶりにトランス状態みたくなった。半分夢を見ているような感じで、ちゃ

んと自分が泳いでいる距離のカウントはしている。だからはっきり覚醒しているが、いっぽ

うで別世界に入っている。けっこう気持ちいい。

 

07年12月8日

今週は『翼の王国』の原稿を書く週だった。原稿といってもそんなに長くない。このパソコ

ンのワードで打つがA4で二枚余りだ。原稿を書く前にまず資料を読む。だいたい若いころ

に読んだものを読み直す場合が多い。新しく読むところもけっこうある。美術史家の文章だ。

翻訳文も多い。物凄くわかりにくい。何度も読み直さないと意味がわからない。美術史家は

文系なんだからもうちょっと文章がこなれていてもいいのではないか。理系の養老孟司とか

茂木健一郎のほうがずっと読みやすい。理系の人は、もともとわかりにくい話をするので、

わかりやすく書こうと頑張っている感じがする。もちろんとても好ましい。文系はちょっと

傲慢かも。

それにしても、原稿は難しい。だって、中学生の感想文というわけにはいかないし、美術史

家の言ったことを焼きなおしても面白くない。自分の言葉で自分の思いを綴らなければなら

ない。これは本当にむずかしい。『翼の王国』の他の人の文章を読むと「上手いな」と感嘆

する。みなさん、あちこちでたくさんエッセーなどを書いている人だ。また、よく読んでい

る。いろいろな知識があるし、「ああ、読んでるなぁ」と思い知る。で、私も頑張って読ま

なきゃ、と思い立ち、図書館で何冊も美術関係の本を借りてきたが、ほとんど読み進んでい

ない。やっぱり私は絵描きかも。絵描きはじっと本なんて読むのは無理だ。絵描きとは美術

の時間だ。中学の美術の時間は遊び時間だった。2時間続いていて、絵は最後の5分ぐらい

で仕上げる。あとの90分は遊んでいる。日向ぼっことかをしている。楽しかったなぁ。私

は少し会社勤めもしたが、机の前で伝票などを整理するより外で荷物を担ぐほうが好きだっ

た。体育会系ではないけど、机の前に一日いるのはとても無理だ。ま、言ってみれば中途半

端な散漫野郎ということか。

毎月90万部発行の『翼の王国』に9ヶ月も執筆しているのに、こんな幸運をもらったのに、

ホームページのアクセス数も変わらないし、絵の売れ行きも変化なし。どこからも何のオフ

ァーも来ない。やっぱり、物凄く未熟だということだろう。ああ、もっともっと精進しなけ

れば。とは言っても57歳。もう先がない。

 

07年12月15日

ブログで、映画『自転車泥棒』を見た感想を書いた。週刊文春を愛読する家内から見ると私

の文章など幼稚園クラスだ。この前は佐野洋子の単行本を読んでいた。あの手の人にはとて

も敵わない。だけど、子供のころに見た感想と57歳で同じ映画を見た感想を比べたりしてい

て、けっこう面白いと思う(自分で言うしかないけど)。

そういえば、この前はブログで自分の絵の裸婦(上の絵)の背中を褒めたっけ。

こういう自慢が多くなるということは歳をとったということかも。

そういえば、今週も何もしなかった。風邪までひいてしまった。ああ、筆だけは洗わなけれ

ば。それからキャンバス張り。

こういうふうに報われないと筆を洗ったり、キャンバスを張るのも嫌になる。それが嫌なら、

もう死ぬしかない。・・・という境遇であることを喜ばなくては。バカか!?

いい絵しか売れないけど、いくらいい絵を描いてもそれが売れるとは限らない。なんか、中

学生に十分条件と必要条件を教えているみたいになった。だって、絵を描く行為と絵を買う

行為は全然別な次元で行われるのだ。独立した行為なのだ。だけどいい絵しか売れません。

ただひたすら、「いい絵」を描き続けるしかないのだ。ま、私の場合、「少しでもましな絵」

と言うべきだけど。

 

07年12月22日

先週はキャンバス張りと地塗りだけはやった(筆洗いも)。これを怠っては「おめぇ、もう

死ねよ」ってことになる。

外で地塗りをしている(寒いのでキャンバス張りは家の中でやらせていただきました)と、

近所の方が「友達が小さな絵を欲しがっている」と声を掛けてくださった。で、その後、以

前絵を買ってくださった別のご婦人からお電話をいただき、F4号をお求めいただいた。こ

れで、もしかすると1月分の家賃が払えるかもしれない。年賀状も買えそう。等迦会の会費

までは無理(=どうしよう。会計さんが怒っていると思う。1月中に何とかします!)。

でも、声を掛けていただいたり、実際に買っていただくと、またまた絵を描く意欲も湧く。

家内も「こいつ、やっぱり絵描きなのかなぁ」と思い直してくれる、少しだけ。

で、なかなか風邪も抜けず、プールにも行けない日々が続いている。会費はまだなのにやっ

ぱり100号は描いておかないとまずいので描いている。外は寒いけど、絵が描けないほど

ではない。全然大丈夫。東京の冬なんて大したことない、というか東京の冬しか知らないけ

どね。

みなさんからいろいろな情報をいただく。

昨日もネットのユーチューブにイッキ描きの実演映像を流したらどうかと助言いただいた。

子供に尋ねると簡単に流せると言う。近日中に実行するので、よろしくご高覧ください。2

年前にテレビでやったDVDである。上手く流せるかどうかまだ分からない。

そのほかいろいろな企てはある。だけど、その前にこのホームページのギャラリーとかをもっ

とちゃんと整備しろ! ・・・まことに申し訳ありません。

 

07年12月29日

年末年始で混んでいたせいか、上手く更新できず、予定がずれましたが、本日から11日(金)

まで12月29日に更新したページに戻します。

昨日は更新日だったのに、すっかり忘れていた。テレビ番組も年末年始の特番になってしま

い、日付の感覚がおかしくなる。

こんな暮らしぶりでは困るから、もう絵を辞めて(というか抑えて)堅気の仕事をしなくて

はと思うと、『翼の王国』の1月号の文章が自己満足だが、なかなかいいように感じてしまっ

た。また、賀状の絵に困っていた娘と妻に、ちょっと描いてあげたら褒められ、またまた

「ヤッパ、俺は絵しか能がないか」と思い改める。孔子様なら「40にて惑わず」だが、こ

ちとら、そろそろ60に近づいても迷いっぱなしだ。

孔子と言えば、茂木先生は高校時代に、友だちと、孔孟か老荘かで論争し、世間知を第一と

する孔孟派の友だちは法曹の世界に進み、人間の理想を追う老荘を良しとした茂木先生は科

学者になったと言う(本屋で立ち読み)。凄いね。どういう高校にいたんだよ。ま、もっと

も小生だって高校時代に老荘思想が気になって東洋哲学に行った。もっとも、私が知ってい

た老荘思想は倫理社会の教科書程度のもの。さすがに父親は「寒山詩」なども読み、一茶か

ら入って、良寛、芭蕉などを讃えていた。だから耳学問だけはあったにはあった。ま、大学

へ行っても、原典をちゃんと読んだのは孟子(なぜか孔孟に行ってしまった)ぐらい。それ

も、読破していない。大学の授業のテキストとしていろいろな原典を扱うが、読み通すわけ

ではない。

まったく、茂木先生とか養老先生などの理系の人もよく読んでいる。中野孝次(専門はドイ

ツ文学)は、桁外れに読んでいる。その中野孝次が1日300ページ読む人を「凄い」と言っ

ている。私など1日30ページも読んでいない。

だけど、スポーツでも読書でも、専門家には敵わない。あたしゃ、ましな絵さえ描けばいい

んだから、健康を損なわない程度にスポーツをして、バカにならない程度に本を読めばいい

ようにも思う。一応最先端の思潮は知っていると思うし、ま、知ろうとはしている。こんな

もんだ。それよりスキルだ。腕を磨かなければ。いろいろ分かっているんだけど実行するの

は大変なんだな、これが。たとえば、上にアップした本日の6号の裸婦は100号を描いて

いる最中にクロッキー会で描いた。筆が凄く自由なのだ。だから、いつもいつも100号な

どを描き続けていれば、小さい絵は神がかったように上手くなる。筆が馴染む。解放される。

わかちゃいるけど、なかなか実行できない。

 

08年1月1日

謹賀新年。

ユーチューブに2年前のテレビ番組をアップ(上の「イッキ描き実演」から入ってください)

したので、今年のみ、元旦更新をする。

12月29日分の更新は1月7日(月)の朝から1月11日(金)まで再アップする。

今日は息子の車で豊橋に来ている。31日は曇りで富士山は見えなかった。諦めてうとうと

していると、車が日本坂パーキングエリアに到着。後ろを振り向くと、真っ白な富士が夕日

を浴びて嘘みたいに美しい。まことに縁起がいい。そう言えば、御殿場の富士も裾野しか見

えなかったが、富士山にかかっている雲が面白い。まるでお釈迦様の手が水を掬っているよ

うな形。富士の頂上辺りから生えているドでかい手だった。掬いの手は救いの手かも。

いい手を見たので安心して寝ていると今度は真っ白な富士山。ホント素晴らしい。

寒波が日本列島を襲って来ている。その夕方は富士山抜きでも夢のように美しい。日本坂か

らだとちょっと遠いが、あの富士山は滅多にお目にかかれない。

いいね。いいね。

今年もよろしくお願い申し上げます。

 

08年1月12日

ここのところ全然絵を描いていない。年賀状を220枚ぐらい描いて終わった。そろそろ2

週間になる。だけど、来週から再来週にかけてクロッキー会と絵画教室が2回ずつ入ってい

る。等迦会の100号も3枚ぐらい描かなければならない。こういう絵漬けの時期には風景

なども上手くゆくから近所に出掛けたい。とにかく地塗りしたキャンバスは山ほどある。も

ちろん100号もたっぷり仕込んである。等迦会の会費も払った。

ただし、収入の道がない。絵なんていつ売れるか分からないもの。

ま、それは致し方ない。現在「そっち方面」も手を打っている。14日までの2日間で何とか

する。もちろん、『翼の王国』の取材とか原稿などはやっているけど、それほど時間はかから

ない。ああ、「そっち方面」が上手くゆきますように! 年中こんな調子だが、今回は特に

骨身にしみて厳しい。家内が全然笑わない。ホント怖いです。

 

08年1月19日

高雄氏のブログがまた私の話になっている。以前にご本人から聞いた話かもしれないが、

「へー、そうだったのか」と読んでしまう。ちょっと大袈裟な話になっていて、むかし赤ん坊

のころの息子を描いた絵を『アトリエ』という美術雑誌で取り上げてもらったことがあった。

高雄氏は、あの絵を上野の西洋美術館のルーベンスの二人の赤ん坊よりいいなどと書いてい

る。あの絵は、家族で牡丹園に行って、牡丹が全然描けず、困っていると、ベビーカーの中

で息子がすやすや寝ていた。ちょうど絵の道具が揃っていたので描いた絵。ルーベンスにか

なうわけがない。

しかし、雑誌に載るといろいろな人が見るものだな、と改めて驚いた。

『アトリエ』なんて凄くマイナーな雑誌だ。画学生が見る雑誌。おそらく今は廃刊になって

いると思う。石膏デッサンの描き方やお手本がよく載っていた。一昔前の美大受験雑誌だ。

あのころは私は35歳ぐらいだったか? 高雄氏は20代の前半。あんな雑誌にも目を通す年頃

だ。

それにしても、雑誌やテレビの力は凄い。『翼の王国』も90万部に迫る雑誌だ。ちゃんと真

面目に書かなければいけない。もちろん、今までもちゃんと書いてきたつもりだ。しかし、

ついもっと面白くなければいけないかとか、文体を変えてみたらとかつまらないことを考え

てしまう。絵画の本質をしっかり記述すればよいのだ。

私は、「絵描き」という生き物を語りたい。それは、自分の主張を絵で表現した人種だ。絵

ばかり描いていた奴ら。絵しか能のない男たち(女流画家もいるけど)。デタラメをやって

も絵筆だけは最期まで手から放さなかった人間だ。共感できるし、同意できるし、尊敬でき

る。私もこの前2週間描かなかっただけで、もう絵を辞めちゃうんじゃないかと心配した。

いつも心配しながら、なんとかこの歳まで続いている。まこと不安定なものだ。昔の絵描き

のことを想うと、また実際に絵を見ると、本当に偉かったな、と心底感嘆する。

 

08年1月26日

『翼の王国』は2年目の取材に入った。1年で打ち切りはなかった。まずは胸をなでおろした。

だけど、あんな文章でいいものか。褒めてくれるのは高雄さんぐらいだ。ま、ジタバタしても

仕様がない。もうこの歳でどうなるものでもない。出来る範囲で頑張るしかない。

 

今朝は寒かった。やっぱり一月末から二月の初めにかけてが一番の寒さかも知れない。私は今

日はお休みだったから、朝はゆっくりさせてもらったが、遅く起きても寒かった。さすがに今

年は暖冬ではないと思う。

明日と明後日は等迦会の審査だ。今年から上野ではなく六本木になった。町田からだと相当近

い。30分は早く着く。しかも始まりが10時なった。確か上野のときは9時だった。そのう

え、土日だから助かる。上野のときは普通の日(週日)だったので、満員電車で死にそうな目

に遭った。私はこの歳までほとんど満員電車を知らないのだ。一時期会社勤めをしたが、田無

から五反田の先の旗の台まで通った。もう30年以上前だが満員電車は凄かった。1年で目黒

に引っ越した。近所に美術研究所があり、会社には自転車で通えた。独身で身軽。夜の美術研

究所に通いたいなら、ふつう家を出る。毎晩裸婦の固定ポーズを描いた。考えてみればハッピー

な環境だ。だけど、自転車で何度も事故に遭い、警察では当たり屋かと疑われたこともある。

馬鹿野郎! 将来の大巨匠が当たり屋をやるかっての。絵画道に邁進する若者の姿が見えない

のかね、大崎のお巡りさんには。悲しいよ。

 

 

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